今日は、東京大学大学院情報学環が主催する、「たのしい科学 岩波映画の理科教室」に行ってきました。記録映画アーカイブ・プロジェクトが行うワークショップには今回初めて私は参加しましたが、前回の「イメージとしての開発 岩波映画・佐久間ダムを見る」に引き続き岩波映画を特集したこの企画は、一見地味なように見えながらも非常に内容の濃いもので、大変貴重な体験となりました。
計4本の科学映画の上映の他、実際に中学・高校で現在教鞭をとられている先生が模擬授業したりするなど、プログラムの構成にも様々な工夫がなされ、観客を楽しませてくれます(途中、休憩の合図に学校のチャイムが鳴るサービスもありました)。特に『ものの燃える速さ』という映画では、粉々にされた炭に火がつき、それが爆発した瞬間、客席からは驚きの声が上がり、みなさんそれぞれが科学映画の魅力に引き込まれていっていたように思います。
しかしながら、今回のイヴェントで最も印象的だったのは、会場にいた多くの人が同様に感じたであろう、岩波映画製作所OB、牧衷(まきちゅう)さんのお話です。入社試験のエピソードから製作の苦労話、予算の問題など、当時の様子を実に鮮明に記憶されており、牧さんがもつ科学映画に対する情熱がひしひしと伝わってきました。このような話は単に歴史的証言として貴重なだけではありません。牧さんのお話で特に興味深かったのは、DVDという新しいメディアが持つ可能性についてです。科学映画はその性質上、基本的に学校の授業で使われていましたが(あるいは今回上映されたものにはテレビ用のものもありました)、その際、映像をいったん止め、実験の結果を彼らに考えさせたり、議論させたりすることが生徒の理解を促進する有効な手段になる場合があります。当時のフィルム上映の場合には、実際に映写機を一度止める必要があり、牧さんの話では、映写機を止める指示を字幕で示した科学映画もあるということでしたが、DVDが普及したおかげで、映像を止めることが容易になり、これを受けて牧さんが、ようやく科学映画の理想の媒体が現れてとてもうれしいと述べていたことが非常に印象的でした。コーディネーターを務めた佐倉統さんが述べていたように、時代がようやく牧さんの科学映画に追い着いたとも言えそうです。そして、このような科学映画の理想の使用例を実践して見せてくれたのが、長谷川智子さんと櫻井順子さんによる模擬授業でした。
対談相手をなさったフィルムセンター主任研究員の岡田秀則さんもおっしゃていたように、これまで牧さんの話をきちんと聞き、それを伝えてこなかったのは映画史の怠慢であると思わなくてはいけないかもしれません。それほど今回のワークショップは内容豊かであり、文句なしに面白いものでした。次回の記録映画プロジェクトによる企画は「岩波映画と女性」についてだそうで、年明け後に行われるようです。これもまた期待したいと思います。
木原
木原さま
返信削除偶然こちらのサイトを見つけました。始めておじゃまします。記録映画アーカイブプロジェクト「たのしい科学岩浪映画の理科教室」へのコメントありがとうございます。この日参加して〈力のおよぼしあい〉を担当した長谷川智子です。牧さんが作られた映画の魅力、そしてその制作魂と哲学を語る牧さんのお話のたのしさを伝えて下さってとてもうれしく思いました。
当日のパンフレットにも簡単に紹介がありましたが、岩波の科学映画はこの他にもたくさんあります。いつ見てもなるほど「へえ~、そういうものか」と驚かされます。
まだデジタル化されていない16mmのフィルム
の「たのしい科学」も多くあり、そうした映画の
存在を知ってもらい、またデジタル化して多くの方に
見てもらえるようにできないものかと思っています。
長谷川様
返信削除コメントありがとうございました!
普段から講演やシンポジウムなど、さまざまなイベントがありますが、先日の記録映画アーカイブ・プロジェクトのように学術的、かつ「たのしい」と思えるようなものは本当に少なく、長谷川さんをはじめ、主催者の方々に大変感謝しています。
科学映画は、映画を専攻している学生にとっても、良く知られているジャンルだとは必ずしも言えません。しかし、その魅力を堪能させてもらった以上、まだ科学映画に出会っていない人たちのために、自分でもその面白さを少しでも伝えられたらいいなと感じました。
ちなみに長谷川さんのものが、当ブログコメント第1号となりました(笑)。今後も随時映画関連の記事を掲載していくので、もしお暇があれば、いつでもお立ち寄りください。
木原